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地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より

新刊ダイジェスト(2025年07月号発行分)

『核心・〈水俣病〉事件史』●富樫貞夫 著

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 水俣病は、1956 年に公式確認されてから70 年になる。だが今もって、医学的にも社会的にも未解明部分を残している。完全な治療方法はなく、多数の未認定患者が存在し、補償問題は決着していない。熊本大学教員の著者は、法学者として1969 年発足の水俣病研究会に加わり、73 年に水俣病第一次訴訟を患者側の全面勝利に導いたレポート「水俣病にたいする企業の責任」を作成した。以来、この終わりなき事件と、患者、住民に向き合ってきた。

 事件の発端は、1932 年にチッソ水俣工場がメチル水銀を含む工業廃水を八代海に放出したことにある。水銀は魚介類に蓄積され、沿岸住民の心身を蝕み、生活を奪った。第一次訴訟で補償協定が結ばれ、公害健康被害補償法の制定に繋がった。2004 年には国と熊本県の責任が確定、09年に水俣病被害者救済特措法が施行された。それにも拘わらず、根本は何も変わらず、むしろ複雑化しているという。遠因は初期に原因究明と被害者調査を阻害したチッソ、行政の隠蔽、歪曲。そして貧窮する患者につけ込み、住民と患者及び患者間の分断、差別を生じさせた狡猾な見舞金、補償金施策。今は患者層の変化と被害者体験の違いから、加害者と被害者の直接的な関係性が見失われ、認定問題も病状論という特殊専門的な医学問題にすり替えられ、問題を分かりにくくしていると指摘する。事件は日本の近代化が生み出したものであり、どのような犠牲の上に現代社会が存在しているかを知らなければならないと問いかける。(飯澤文夫)

◆2500円・四六判・291頁・石風社・福岡・202503刊・ISBN9784883443314

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『死民と日常 -私の水俣病闘争 新装版』●渡辺京二 著

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 渡辺京二氏は一九六九年から「水俣病を告発する会」の会員として「水俣病闘争」に関わり、その間必要に迫られて多くの文章を書いてきた。本書はそれらを一つにまとめた〈水俣病闘争論集〉である。二〇一七年に初版が刊行され、今回はその新装版となる。『終わりなき戦いの序章』『許すという意味』等々、様々な局面で書かれた渡辺氏の文章を内在的に理解するためにまず、一九九〇年に、自身の活動を総括するという意図で行われた講演『水俣から訴えられたこと』を読むことで水俣病事件の通時的な歴史を押さえておくといいかもしれない。それとともに本書のどの文章を切り取っても聴こえてくる渡辺氏の思想の脈動を聞き逃さないようにしたい。

 その脈動は、本書の中では「上層的建築物」とも呼ばれる近代経済システムや法的政治的機構といった観念的な疎外態を取り払ったときに、なお残存する自然のなかの生活世界、すなわち患者さんたちの存在構造の基底に渡辺氏が軸足を浸しているところからきている。この視座は例えば『チンプンカンとしての裁判』では、法的言語や市民的権利概念が外在的であるほかない患者さんたちの位相として語られ、『流民型労働者考』では、市民社会的原理では統合され得ない水俣漁師地区における流民的意識の歴史的形成を考察するところに表れる。こういった思考の深みや包括性を背景にしてはじめて「生活民それ自体の自立した闘争」(『私説自主交渉闘争』)ということの本来的意味が理解できるのである。(岡安 清)

◆1900円・四六判・285頁・弦書房・福岡・202504刊・ISBN9784863293083

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『長崎游学4 −軍艦島は生きている!「廃墟」が語る人々の喜怒哀楽』●軍艦島研究同好会 監

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 世界遺産登録(平成27 年7 月)から丸10 年、長崎の顔として定着した軍艦島を取り上げた新刊が、地元長崎の出版社から届いた。少し読んで、コンパクトな誌面にさまざまな情報がぎっしり詰まっていることがわかり、「初心者から詳しい方まで、広く親しむことができる」と思った。

 印象に残ったのは連絡船「夕顔丸」の記述。明治20 年に長崎で造られて、昭和6 年から37 年まで、孤島 端島(はしま)から高島・長崎への足であり続けた。75 年も運航を続けた老船がどれだけ島民の方々に愛されてきたか、誌面から強く伝わってきた。

 軍艦島が多くの人々を引き付け続けるのはなぜだろう。いろいろな側面があるが、読後感としては、東京よりもはるかに密集していた島民の暮らしに、とても濃い人間関係が伴っていたことが特筆と思った。良し悪しはあるにせよ、それはなつかしく、かつ魅力的だ。炭鉱という産業が失われたのは昭和49 年1 月のこと、その3 か月後、軍艦島から島民はいなくなり、多くの建物は廃墟として残った。おかげで「そこに暮らしがあった」ことを、誰しもが思い浮かべることができる。

 無住化から半世紀以上の時が流れ、元島民や関係者など、往時のことを知る方々は数少なくなってきた。しかし、人々の関心が続く限り、軍艦は動き続け、生き続けることであろう。さすが日本唯一の存在、「長崎の顔 軍艦島」なのである。(HEYANEKO)

◆1000円・A5判・67頁・長崎文献社・長崎・202502刊・ISBN9784888514217

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『桜人伝説 −桜をめぐる作家たち』●細川呉港 著

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 本書の副題は「桜をめぐる作家たち」だが、宇野千代、水上勉、小林秀雄などの有名な作家たちはむしろ脇役で、本当の主役は名もなき英雄たちだ。全6章の中には桜に魅せられた作家を中心とした文壇史的な部分もあるが、評者が心を揺さぶられたのは、圧倒的に、無名な市井の人々が地道な努力を重ねて、大きな夢をかなえる部分である。特に強く印象に残るのは、第2章の佐藤良二の生涯だ。

「桜の並木で太平洋と日本海をつなごう」という途方もない夢が多くの人々の心を動かし、彼の死後も街道に桜を植える運動が広がっていった。また何度も登場する桜校長高松祐一から直接聞いた話が本書の骨子となっていることも興味深い。だからこそ、人名索引と年表はつけて欲しかった。そうすれば高松祐一を中心にした桜が取り持つ人間関係の面白さをより深く楽しめるのに。と書いている最中、2026年後期のNHK 朝ドラのタイトルが宇野千代をモデルとした『ブラッサム』に決まったというニュースが流れた。NHK の特設サイトを見ると「開花を意味するブラッサム。『咲き誇れ』という思い、もうひとつは、チェリー・ブラッサムの『桜』宇野千代さんのトレードマークです。」とある。

 彼女が愛し、蘇生の母となり小説の題材にした根尾の薄墨桜のエピソードがドラマの中でどこまで描かれるかは不明だが、桜が重要なテーマになるのは間違いない。本書を読んで予習しておけば、ドラマが2倍楽しめるに違いない。(石井一彦)

◆2400円・四六判・256頁・中国書店・福岡・202505刊・ISBN9784867350591

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『さきたまの古墳と古代史』●塚田良道 著

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 4世紀から6世紀にかけての日本列島は古墳時代、いわゆるヤマト王権(ヤマト政権)誕生の時期に相当する。文字資料が極めて少ない中、七支刀の銘文、好太王碑文(広開土王碑文)、隅田八幡神社蔵の人物画像鏡銘などとともに、さきたま古墳群(埼玉県行田市)の稲荷山古墳から出土した金錯銘鉄剣は、ヤマト王権を考えるうえで重大な発見となった。

「ワカタケル」という人名が熊本・江田船山古墳の銀錯銘大刀にも記されており、「ワカタケル」=雄略天皇が東西の地域権力にまで影響を及ぼしていたことが明らかになる。雄略天皇に仕えた杖刀人「ヲワケ」が作らせたこの鉄剣の銘文は、杖刀人の首長の地位を継承した人々の系図だという。系図であるならば被葬者も当然オワケ本人であることになる。古墳後期の5世紀後半に築造された稲荷山古墳を筆頭にさきたま古墳群は7世紀初頭までに8基造られた。それらほぼすべてが国内最大の前方後円墳で知られる大阪府堺市の大仙古墳の相似墳という。稲荷山古墳をつくった人物が何らかの関わり合いから模倣したものと思われ、堀の形状については方形という独自のスタイルを構築、歴代の首長もそれを踏襲していった。では稲荷山古墳を造ったのは誰なのか。古墳前期の比企地域からやってきた勢力との説が有力視される中、著者は馬具や挂甲および鉄器などの副葬品に注目。朝鮮半島伝来の技術により機内の技術革新が興隆、それを取り入れた人物ではないかと推測。(I)

◆2000円・A5判・289頁・まつやま書房・埼玉・202504刊・ISBN9784896232288

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『江戸の改革者 蔦屋重三郎と田沼意次と松平定信』●植村美洋 著

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 NHK の大河ドラマ『べらぼう』の主人公となり、今や一躍「時の人」となった感のある蔦屋重三郎。彼が活躍したのは、江戸幕府の政治が田沼意次から松平定信へと移り変わっていく時代でした。二人の政治家の人物像と政治体制の違いと、そんな時代を生きた蔦屋重三郎の姿を本書は見ていきます。彼の出発点として知られているのが吉原遊郭のガイド本の出版でした。時の老中は田沼意次。商業政策に重点を置いたその政治は賄賂政治などと批判されることもありますが、それだけではなく産業振興、印旛沼や蝦夷地の開発など進取の気風があった時代と言えるかもしれません。

 こうした中で自由闊達な雰囲気が形成され、蔦屋重三郎はその後狂歌や黄表紙といったジャンルにも手を伸ばしていきます。一方で田沼の後を受けた松平定信は農村重視・社会風潮の綱紀粛正と、田沼時代とは一線を画した政治姿勢をとりました。しかし松平時代には徐々に蔦屋重三郎の出版活動も制限されていくことになります。彼自身も処罰を受けますが、それ以上に本の著者陣が活動をできない状況に追い込まれていったのでした。それでも浮世絵や大首絵に軸足を移し、著者曰くあの写楽を使い倒すほど活発に出版活動を展開し、それを全うしました。そんな姿からはふたつの時代をしたたかに生き抜いた蔦屋重三郎の姿が伝わってきます。一方で政権中枢から失脚した後の田沼と松平二人の政治家の対照的な晩年の姿も興味深いものです。(副隊長)

◆1500円・四六判・198頁・歴史春秋社・福島・202504刊・ISBN9784867620595

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『午後のコーヒー、夕暮れの町中華』●安澤千尋 著

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 ふらりと街を歩くと、たくさんのおいしい店との出会いが待っている。もともと通っている馴染みの店や有名店、クチコミで知らされたり、通りすがりに見つけて、いつか行ってみようと気になっていた店。出会いの形はさまざまだけれど、いつだって街にある小さな店に助けられ、生きる力を取り戻してきた。

 そんな元気をくれる店を街歩きエッセイストが教えてくれる。浅草、上野、日本橋など7つに分けた東京下町エリアを中心に全61 店。初めてひとりで喫茶店に行ったのは小学生の頃。焼き立てのホットサンドを食べながら仕事を終えた母親が来るのを待つ。それが喫茶店の原風景であり、大人になって街歩きが始まった。「銀座ブラジル浅草店」のチキンバスケットはいつも揚げ立て。もうひとつの看板メニュー、カツサンドは端のどちらから食べてもおいしく感じられるように脂の部分を互い違いに並べてサンドしている。映画を観た後、日本橋の「ミカド珈琲」で余韻に浸る。日曜営業がありがたい神保町の「三幸園」で遅めの町中華。その他、甘味やそば、オムライスや和定食など、あらゆるジャンルのおいしいものと居場所の記憶が詰まっている。食だけでなく、ささやかな労いの言葉や世間話で心を暖めてくれる店員さんとのふれあいや、幼い頃、祖父母も含めた家族で訪れた店でのかけがえのない思い出も甦る。中には残念ながら閉店してしまった店もあり、街も人も店も変わりゆくが、店の佇まいや働く人の矜持は変わらずに記憶に残り続ける。(Y)

◆1800円・四六判・222頁・書肆侃侃房・福岡・202505刊・ISBN9784863856721

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