地方・小出版流通センター発行情報誌「アクセス」より
県民の四分の一、凡そ10 万人もが犠牲になった沖縄戦。沖縄を本土決戦の捨て石とする軍部に抗い、県民の安全を願う一方で戦争協力を求める二律背反に懊悩しながら、20 万人を県外に疎開させた県知事島田叡と県警察部長荒井退蔵。島守と称えられる二人の思索と行動は、既に著者の手で、『沖縄の島守−内務官僚かく戦えり』(中央公論新社、2003)として出されている。
島田の故郷兵庫県では、20 回忌の1964 年に母校旧制県立神戸二中同窓会が慰霊碑を建立し、学生時代に野球選手であったことから、沖縄県高校野球連盟に働きかけて島田杯大会を開催するなど交流を深めている。それに比べ、栃木県出身の荒井の功績は、地元で殆ど語られることがなかった。それが近年にわかに動き出した。荒井の生地清原村で暮らした元高等学校長が、たまたま前著を手に取ったことに始まる。元校長は村長の計らいで奨学金を得て宇都宮高校に進学したが、その村長は荒井の実兄であり、高校は荒井の母校であった。元校長や同窓生らの奔走で顕彰と交流の機運が高まり、フォーラムの開催、県内高校の沖縄修学旅行用漫画資料制作、小学生バレークラブの沖縄遠征と進展した。特筆すべきは、若い世代が取り組みに参加したことと、三県関係者が互いに訪問し合う草の根のトライアングル交流に発展したことである。沖縄戦から80 年。語り継ぎ、平和のためになすべき課題はたくさんある。二人の終焉の地も未だに分からない。本書の刊行を待たずに急逝した著者の冥福を祈りたい。(飯澤文夫)
◆2500円・四六判・411頁・悠人書院・長野・202204刊・ISBN9784910490045
《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
HonyaClub.com|紀伊國屋WebStore|セブンネットショッピング|e-hon|楽天ブックス|丸善&ジュンク堂書店|アマゾン|HMV&BOOKS online|Yahoo!ショッピング|
地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。
江戸時代には幾度もの飢饉が各地を襲った。『かてもの』は、米沢藩9代目藩主・上杉鷹山が、食べられる野草(救荒植物)を1 冊にまとめ、藩内の各地に配ったもので、飢饉の時に多くの命を救ったとされる。著者は北欧デンマークで暮らした後、山形県米沢市に移住。その里山は上杉鷹山の時代に武士たちが半士半農で暮らした場所だった。あるとき隣人がお皿に入ったおかずを届けてくれ、「おいしいですね」と言うと「これですよ」と原っぱの野草を指して教えてくれた。これが「かてもの」との出会いだった。
本書はそんな「かてもの」を使ったレシピ集。タンポポやハルジオン、オオバコなど意外と身近な野草も。また健康への効能も添えられている。「食べられる野草を知っていることはなんだか楽しくて、幸せなことです。今の暮らしの中で鷹山公の残してくださったことを豊かにつないでいけたら幸せです」と著者は言っている。(U)
◆1800円・A5判・201頁・山形会議パブリッシング・山形・202505刊・ISBN9784910883038
《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
HonyaClub.com|紀伊國屋WebStore|セブンネットショッピング|e-hon|楽天ブックス|丸善&ジュンク堂書店|アマゾン|HMV&BOOKS online|Yahoo!ショッピング|
地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。
28歳の絵本作家、綾瀬純一。彼は産婦人科医院の前に捨てられており、綾瀬夫婦の養子となった。夫婦は彼にきちんと事実を話していて、実の親子以上の強い絆で結ばれている。のちに夫婦には女の子が産まれたが、血のつながらない妹、麦との関係も良好だった。
そんなある日、ジョギング中に見えた鉄塔の鉄骨に座り込んでいた女に追いかけられ、意外な話を聞かされる。二十代前半にしか見えない女はエミューという名で、純一の実の母だといい、無実の罪で” 水子の国” の刑務所に入っていたと告白。流産したため、純一は一度水子の国へ送られた胎児だったが、芸術の才能があったため、この世に戻されたという。 最初は信じられなかったが、巨大な胎児の風貌をした水子の国の保護調査官タキグチが現れ、彼の誘いで水子の国を訪れたりするうちにエミューを守りたいと思うようになる純一。さらにエミューが濡れ衣を着せられた原因となった人間の女の姿をした怪物との戦いも待っていた。
奇想天外なストーリーを圧倒的な筆力で描き出すのはギャグ漫画『がきデカ』で一世を風靡した山上たつひこ。「お兄ちゃんは金鳳花だね」麦が純一に言う。金鳳花は予想もしない所へ根を張って不意に顔を出して人を驚かす。純一も読者を驚かすのが好きな優れた道化師。これがタイトルの由来だが、まさに著者にもあてはまる。時には残酷で毒の効いた面を見せつつも、家族の愛と再生を謳った、才能が花開く壮大な小説。(Y)
◆2300円・四六判・351頁・フリースタイル・東京・202506刊・ISBN9784867310083
《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
HonyaClub.com|紀伊國屋WebStore|セブンネットショッピング|e-hon|楽天ブックス|丸善&ジュンク堂書店|アマゾン|HMV&BOOKS online|Yahoo!ショッピング|
地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。
なぜ〈経験主義者〉デカルトなのか。周知のようにデカルトは「近世哲学の父」として名高く、そして近世哲学は合理主義(生得的な観念の存在を認め、それに基づいて演繹的に哲学を構築していく)と経験主義(生得的な観念の存在を否定し、あらゆる知は経験によって獲得されるとする)の二つに大別されるのが一般的であり、デカルトは「合理主義の祖」とも呼ばれているのである。
著者は、デカルトの様々な文献を何度も読むうちに、これまで看過されてきたあるテクスト的事実に行き着いた、という。それは形而上学を論じるデカルトの文献において「経験」という言葉が多用されているということである。こういったことは、デカルト以前の哲学者たちにおいては一般的ではなかった。アリストテレスは経験を、〈感覚を介して得られるもの〉や〈記憶から生じるもの〉とみなしたが、この規定に従うかぎり、感覚を超えた事柄を扱う形而上学において経験は役立たない。
しかしデカルトは、その方法的懐疑が最も先鋭化する形而上学において経験という手段を多用する。「彼は自身の存在を、自身のうちにおいて彼が、存在するというのでないかぎりは思惟するということはありえない、と経験することにおいて学び知る」(『答弁』)というように。本書は、デカルト哲学における「経験」とはいったいどのようなものであるのか、そしてその「経験」が彼の自我論や自由意志論においてどのように機能しているのかについて論じていく。(岡安 清)
◆2000円・A5判・131頁・大阪公立大学出版会・大阪・202505刊・ISBN9784909933874
《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
HonyaClub.com|紀伊國屋WebStore|セブンネットショッピング|e-hon|楽天ブックス|丸善&ジュンク堂書店|アマゾン|HMV&BOOKS online|Yahoo!ショッピング|
地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。
著高根沢町は、東京からおよそ100km の距離にあり、栃木県のほぼ中央に位置し、宇都宮に隣接している。日本の原風景とも言える豊かな田園風景が広がり、皇室の台所と称される「御料牧場」があることでも知られる。そんな風土から生まれた民話や伝説を絶やさぬようにと、小学校や老人施設、町文化祭などで民話語りを続けてきた「たかねざわ民話の会」の語り部のみなさんが、途中コロナ禍を経て、九年の歳月をかけて本書の刊行にこぎつけた。
高根沢の生活語である栃木弁、高根沢弁といった方言が使われ、語りの臨場感が生きている。興味深いと思われるのは異伝とともに収録されている話がいくつかあることだ。例えば、農水省の全国「疏水百選」に選定された上高根沢五行川低地の湧水池「おだきさん」の名称由来伝説。働き者で美貌のおだきは、奉公先の庄屋の息子に恋したものの成就せず、池に身を投げたとされる。異伝のほうになると、こちらのおだきは対照的で、人一倍意地っ張りとされ、村はずれの沼で夜通し魚を釣ったはいいが、取りすぎて沼の主の怒りを買い、釣った魚ごと主に飲み込まれてしまう。
また、平田地区に伝わる「雪姫塚」は、没落した太田城主の娘・雪姫が許嫁に死なれ、後を追うように川に身投げする話なのだが、結末では塚が築かれ丁重に供養され、美しい悲劇の余韻が漂う。一方異伝のほうでは、娘が身投げした渕からは怨霊が漂っているかのようにうめき声が聞こえる、という怪談話になっていて、結末が明暗反転している。(N)
◆1300円・A5判・147頁・下野新聞社・栃木・202506刊・ISBN9784882868989
《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
HonyaClub.com|紀伊國屋WebStore|セブンネットショッピング|e-hon|楽天ブックス|丸善&ジュンク堂書店|アマゾン|HMV&BOOKS online|Yahoo!ショッピング|
地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。
今回の旅先銭湯別冊は『10 人の文豪と銭湯へ』ということで、作家や漫画家に関わる土地の銭湯をめぐる本です。ゆかりの地を旅してその土地の銭湯を紹介していく本書ですが、その中には実際に文豪が通っていた銭湯も紹介されています。
司馬遼太郎が頻繁に訪れていたのが東大阪市の八戸ノ里温泉。取材に行ってみると「よう来てたよ」という驚きの回答が。しかも銭湯のご主人は、司馬遼太郎からのプレゼントを要らないから断ったエピソードを語るのでした。そういった気取らない雰囲気を愛していたのかもしれませんね。ちなみにこちらの銭湯は打たせ湯が特徴的。一方甲府には太宰治がよく通っていたという銭湯が今も健在です。喜久乃湯温泉は今年で創業百年。太宰治が甲府に住んでいたのは短い期間でしたが、人生の中でも最も心地よい日々でもあったようです。そこにはきっとここに通うことも含まれていたのでしょう。脱衣所に残されている手書き看板の数々がこの銭湯の歴史の長さを物語っています。一方鴎外の湯というイベントが開催された森鴎外は、実際は風呂嫌い。それでも地元文京区の銭湯は工夫を凝らして銭湯を盛り上げようと、様々にイベントを企画したりしています。旅先ごとに気持ちよさそうな銭湯があり、ひと風呂浸かりに行きたくなりますし、中・高の国語教師でもある著者の語る文学話も楽しくて、とりあげられた作家たちの本も読みたくなる、一粒で二度おいしい一冊です。(副隊長)
◆1700円・四六判・155頁・さいろ社・兵庫・202506刊・ISBN9784916052827
《オンライン書店で購入》
※主なショッピングサイトのトップページにリンクを貼っています。リンク先の書店によっては、お取り扱いしていない場合があります。ご了承ください。
HonyaClub.com|紀伊國屋WebStore|セブンネットショッピング|e-hon|楽天ブックス|丸善&ジュンク堂書店|アマゾン|HMV&BOOKS online|Yahoo!ショッピング|
地方・小出版流通センターへの直接注文、お問い合わせはコチラをご覧ください。
株式会社 地方・小出版流通センター
郵便番号162-0836 東京都新宿区南町20
TEL.03-3260-0355 FAX.03-3235-6182
電子メールでのお問い合わせは、chihosho●mxj.mesh.ne.jp まで。
*お手数ですが、●の部分を半角のアットマーク「@」に書き換えてご送信ください。スパムメール対策のためです。すいませんがご了解ください。
当ページに掲載されている記事・書誌データ・写真の無断転載を禁じます。